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ピルを服用し始めて6ヶ月目になる。
前から自分自身が主体でできる避妊法として、興味もあったしいつかはと思っていた。
月経前のイライラや落ち込みもあったので、PMSが改善したらいいなとも思っていた。
私には異性のパートナーがいる。
彼は初めから避妊をしてくれていた。
自分でコンドームを用意してきてくれて、本人に合ったコンドームを知っていた。
だからなのか、あまり痛みを感じることが少なかった。
男性側が自分に合ったコンドームを選ぶことで、過度な摩擦が減って、女性側も痛みを感じづらくなるのではないかと思った。
それによって、私はセックスを楽しめるようになったと思う。
もちろん、コンドームのことだけでなく、優しく丁寧に尊重してくれる姿勢や態度に安心を得たことも大きい。
この人は、自分の欲望がむきだしになる場面でも、私を大事に扱ってくれる。
そう思えるからこそ、自分は安心してセックスができ、体が緩み預けられ、結果的に気持ちよくなることができるのだと思った。
それでも、やはり彼の前で達することは簡単なことではなかった。
一人でするときは短時間で達する。
触り方などを彼にも伝えてみた。
きちんと聞いてくれるし、言ってくれた方がわかって嬉しいと言ってくれる。
でも、難しい。やはり他に何も考えず没頭できない。
でも、達せなくても、とても気持ちいいのは間違いなくて、また違った種類の安心や心地よさを強く感じる。だから嬉しいし楽しい。
「いってほしい」「いけそう?」と聞かれると、プレッシャーに感じてしまう自分がいた。
頑張って、いこうとする。集中しようとするし、彼にもこうしてもらえると嬉しいと伝える。時間をかけてしてくれる。でも、でも、いけない。
時間をかけてもらった分だけ、とても申し訳なくなってしまって、フリをしてしまったこともある。
彼の前では嘘をつかないと決めていたのに。すごくつらかった。切なかった。自分が情けなくて悲しかった。
そうこうしているうちに、月経が2週間程度遅れた。
最近はほぼ周期が安定していたため、日に日に緊張感が増した。
避妊に失敗はしていないが、それでもコンドームは100%ではないと知っていた。
もし、今自分が妊娠したら。
いつもそれを念頭に置いていなければならなかったのに、いざ考えてみたら、産むことに強い強い躊躇いを感じる自分がいた。
彼にも誰にも知られずに堕胎する術はないか検索している自分もいた。
大事な命であるにもかかわらず、自分の今置かれている状況とを天秤でかけて、グズグズする自分。
大した覚悟もできないでセックスしていた私は、きっと高校生と変わらなかった。
結果的に月経はきた。
だから私は、ピルを飲むことにした。
彼にも経緯を伝えた。
すごく怖かったこと、自分が「妊娠したら産もう」と腹を決めきれていないこと、ピルを飲もうと思うこと、もし避妊せずセックスするなら当たり前だけれど子どもができてもいい環境になってからにしたいこと。
彼氏は聞いてくれて、受け入れて同意してくれた。
診察にいった。
血栓症のリスクを調べるために採血をした。
幸い私はリスクが低いようだった。
薬はワンシート1500円程度だった。
毎朝7:00に飲むことにした。
休日も朝起きる。
特に強い副作用を感じることなく過ごすことができた。
このころから、彼が「そのまま入れたい」と言うようになった。
無理矢理されることはなかったし、私もそのまましてしまいたい気持ちになる場面であることもあった。だから、「そのまま入れたい(くらい気持ちが昂っている)」と受け止めていたし、わたしから「それはだめ」と一言伝えれば避妊して続けてくれた。
でも前回は少し違うように感じた。
「そのまま入れたい」と言われたときの本気度が高かったように思えてしまった。
いつものように「それはだめ」と伝えると、別室に買って置いてあった新しいコンドームではなく、近くにあった別メーカーの古いコンドームを持ってきた。
(本当はもう捨ててほしい、昔の、きっと前の人とのコンドーム。言えていない私もダメだったなと思っている。)
別メーカーのものなので、「それで大丈夫なの?」と聞くと、
「少し古いかも」と言われた。
「うーん」と私がいうと、コンドームが近くにある別室に場所を移すことになった。
その後はきちんと避妊をした状態で続けた。
終わった後、モヤモヤがあとからあとから込み上げた。
いわゆる「ピル飲んでるから大丈夫」と彼が思っているのかと思ったらショックだった。悲しかった。
そうならないために、話し合ってきていたつもりだったから。
服用していると言わなければよかったのかもしれないと思った。
「どうしてそのまま入れたいって言ったの?」と聞いた。
「コンドームも買うし、必要であることはわかっているけれど、興奮するとそのまましたくなってしまう」
「コンドームをつけるまでに一度流れが遮られてしまうのがやはり嫌だと思う」
正直よく聞く話だなと思った。がっかりした。それは聞いたしもうわかってるよと思った。
「でも前は言わなかったよね。」
「前に話したけれど、子どもができてもいい状態になるまではコンドームはつけるということで納得してもらってるってことでいいんだよね?」
と確認した。
「それでいい」と彼は言った。
私はいま産む決断ができない。多分。
だから、怖いのだ。本当に怖いのだ。
そういう自分も、本当は少し悲しい。
周りには、「授かったときに決めたよ」という子たちもたくさんいる。
でも、自分にはその自信がない。
なにより、悲しかったのは、
彼が私に聞いてくることだったんだと思う。
それで私がいいと言ったら、そのまま入れるの?
私がいいって言ったから?私の自己責任?
私がダメって言うから、あなたは我慢しているの?
私がいいって言えばいいの?
どうして苦しくなるのか。
気持ちよくなりたいのに、不安なく体を委ねたいのに、彼もそうしてほしいと言っているのに、
興奮するたびそのまま入れていい?と言われたら、
私はそのたび理性を取り戻して、はっきり断らなくてはいけないんだなと思うから。
しかも断れなかったら、私の責任で、そのまま入れられてしまうということになる。
私が怖いと思うことを、本当は彼が望んでいるということ、それをきちんと断るのは私がやらなくてはいけないということ。
私だってできることならそのまましたい。
でも、だからこそ、冷静に話ができるときに今は違うよねって、確認しあったんじゃないですか。
こんな風に思いたくなかったから、彼と私で対立するように思いたくなかったから、二人の問題として、どうしていこうかと事前に話したんじゃないのかな。
この怖さはわたしだけなのかなと思ったら、悲しくなってしまって、うまく伝えられなくて。
どんなときでも安心して、あなたを信頼したいから、それがお互いの気持ちよさにつながるはずだし大前提だから。
だからなんと伝えたらいいか分からなくて悩んでいる。